どーも、がばちょでございます。
みなさんが、国産バイクを新車で購入する場合は、そのほとんどが水冷エンジンになっていることでしょう。
しかし、バイクを中古車市場から購入する場合は空冷エンジンの仕様のものがあります。
空冷エンジンと水冷エンジンとは何が違うのでしょうか。
エンジンのオーバーヒート
空冷と水冷の違いの前に、エンジンのオーバーヒートについて解説しましょう。
バイクに乗っているとわかりますが、エンジンというのは数百度単位で非常に高温になってしまいます。
この高温な状態のままでエンジンを動かし続けるのは、エンジンにとってもちろんよくありません。
そもそも、バイクのエンジン関連の各パーツには素材として鉄やアルミが使われています。これらの鉄やアルミは通常の温度で、適正なクリアランス(隙間)が維持されるように設計されています。
しかしアルミや鉄はそれぞれ膨張する割合が違うため、正規の温度を超えて高温(オーバーヒート)になってしまうと、クリアランスが狂ってきます。必要以上に隙間が出来てしまったり、そもそも変形してしまったり。
そうなってしまうと、最悪の場合はエンジンがやけついてしまい使い物にならなくなってしまいます。
そういった事を防ぐためにエンジンは、走行中に常に冷やしておく必要があります。その冷やす方法として主流なのが、空冷と水冷になります。
空冷と水冷の違い
それでは、空冷と水冷の違いとは一体何でしょうか。
空冷エンジン
空冷エンジンというのは走行風でエンジンを冷やす昔ながらの方式。

この画像の矢印部分のフィンに走行風が当たることによって、エンジンを冷やすというスタイルです。
エンジン部分にフィンがたくさんついており、風が当たる面積を増やすことでうまく熱を逃しているわけです。
空冷エンジンのメリット
- シンプルな構造
空冷エンジンの最大のメリットは、シンプルな構造だということです。
メンテナンスに掛かる費用もおさえられますし、水冷式に比べて軽量になります。余計なパーツがついていません。維持費が安くみますし、車体が軽量なら燃費も向上します。
- 見た目
空冷エンジンは、その冷却方法からエンジンがむき出しになり、多数のフィンがついています。そのシンプルなスタイル、見た目に魅力を感じる方は多く空冷エンジンのほうが美しいと言う方もいらっしゃいます。
- 乗り味
空冷エンジンには、バイク本来の乗り味を楽しむことができると言われています。その乗り味や排気音、フィンの造形美など性能面だけでは見えてこない魅力を空冷エンジンは備えています。
空冷エンジンのデメリット
- オーバーヒートしやすい
空冷エンジンは、その冷却方法が風にあてるということなので冷やすことに関しては、どうしても限界があります。夏場の空冷エンジンの熱気は凄まじいです。
また渋滞などにハマってしまい、走行風自体があたらなくなると、みるみるエンジン内の温度は上がっていきオーバーヒートが起きる可能性があります。これはエンジンがハイパワーになればなるほど、その可能性があがってきますので、パワーのあるエンジンには空冷はむいていません。
- エンジン部分の掃除が面倒
空冷のエンジンにはフィンがついているため、ゴミやホコリがその間に溜まっていることが多いです。しかしフィンが邪魔をして掃除がしにくく、放っておくとサビなどの原因となりかねません。
- 排気ガスを多く出すことがある
空冷エンジンの場合はエンジンの温度が一定ではなく、目まぐるしく変化します。そうすると当然ながら燃焼時の温度も変わってくるので綺麗な燃焼が出来なくなります。
もしも温度が低かった場合ガソリンが上手く気化されずそのまま排出されるので排ガス規制の対象であるHC(炭化水素)が大量に放出されてしまいます。
反対に温度が高かった場合は、今度は同じく排ガス規制の対象であるNOx(窒素酸化物)を大量に排出してしまいます。
水冷エンジン
一方の水冷エンジンは水(冷却水)をエンジンの周囲に巡らせる事によって、エンジンを冷やします。一旦冷やした水はもちろん熱くなっていますので、その水はラジエーターを通して走行風で冷やすことになります。

この画像の矢印部分がラジエーターです。ここに風が当たることで、水が冷える仕組みです。
つまり水冷式も最終的には走行風を利用して「風で冷やす」ということには変わりありません。
しかし、水冷の場合は渋滞時などに冷却水の温度が上昇してくると自動的にファンが回って勝手に冷却を始めてくれるシステムが有るため、オーバーヒートする事はほぼありません。
水冷エンジンのメリット
- エンジンの温度を一定にたもつことができる
水冷エンジンの場合はエンジン温度を一定にたもつことができます。これにより夏場のオーバーヒートなどを防ぐことができますし、冬場はエンジンが冷えすぎるのを防ぐことができます。

このように冷却効率が高いということは、空冷では扱えないような馬力が大きいエンジンの場合でも安定したエンジン性能を保つことが出来るということです。
- エンジン音の遮音性がある
水冷エンジンの場合は、エンジンの回りを冷却水がおおっているので音が遮断されます。そのため近年の新しい基準が採用されている騒音基準のクリアをしやすくなっています。
水冷エンジンのデメリット
- 維持費が高い
水冷エンジンの場合は、メンテナンス代や維持費(冷却水の交換など)が必要になってくる可能性があります。
水冷エンジンは空冷エンジンに比べて、余計なものが多くついており、それらがトラブルのもとになることがあります。
- 水漏れ ホース類
- 水回し(ウオーターポンプ)のトラブル
- そのセンサーの不具合
それらのトラブルに見舞われた時は、空冷エンジンでは払う必要のないお金を払うことになります。
国産メーカーで空冷エンジンが減った理由
水冷エンジンのほうが、技術的に見ても優れており空冷エンジンに勝ち目はないでしょう。近年の国産メーカーでは、空冷エンジンのモデルは激減しています。
その理由は水冷のほうが優れているからという単純な理由ではありません。
- 排ガス規制
- 騒音問題
この2つの問題が理由で、国産メーカーの空冷エンジンは激減の一途をたどっています。
空冷エンジンの場合だと最新の厳しい排気ガスや騒音の規制をクリアさせようとすると大幅にパワーダウンしてしまいます。
もし、そうならないような空冷エンジンを作ったとしても、新たな基準に適合させるためにはかなりの開発費用がかかってしまい、結果として車体価格に反映されてしまいます。
以前は空冷エンジンは水回りが不要な事から低コストで比較的容易に造れるエンジンと言われていました。しかし排ガス・騒音規制が厳しくなったことで、空冷エンジンの置かれている立場は大きく変わってしまいました。昔の古い規制の時代にそっていた空冷エンジンを、現代の新たな規制に適合させるようにするには、コストが莫大になります。
しかもそのように開発されたエンジンは、本来の空冷が持つ乗り味や排気音のない面白みにかけるエンジンになるという悪循環です。
「水冷エンジンより高額なのに低性能で、空冷エンジンが持つ乗り味や排気音を感じることのできないバイク」となると、購入する人はあまりいないでしょう。
対して水冷の場合は、その構造からあまりコストをかけずに新しい規制をクリアできますし、パワーダウンしても排気量アップでカバーできます。
まとめ
エンジンを工業製品とだけ見るのならば空冷よりも、水冷のほうが優れているのは間違いないでしょう。個人的な好き嫌いを抜きにして、比較した場合に空冷に勝ち目があるようには思えません。
しかし、バイクは趣味の乗り物です。趣味の世界を性能だけで語られてしまうと面白みがなくなってしまいます。
空冷がもつ乗り味や造形美に夢中の方は多くいらっしゃいますし、僕も初めて乗ったバイクが空冷だったので、空冷が少なくなってくるのは寂しいです。
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